2017.07

ファンタジーを追求する
ファッションフォト

ファンタジーを追求する<br>ファッションフォト01
デザイナーの田村です。



本が好き!というより絵を見るのが好きな私は、絵本の挿絵やファッションフォトが好きです。
読んで理解する、と言うより、見てワクワクするとか、感動するとかの方が性に合う気がします。
ファッションフォトは「フィクション」であり「ファンタジー」。
そこには何が正解で何が真実か、明確な答えはありません。

正解がないゆえに作り上げていく世界は、ただひたすらに未知なるドラマチック!
それを実感し最も魅了されたものが、Tim Wakerの写真集「PICTURES」(2008)
ファンタジーを追求する<br>ファッションフォト03
ファンタジーを追求する<br>ファッションフォト04


彼の写真はおとぎ話のようなセットとスタイリングで世界観を作り出し、
そこにあるはずのないもの・ありえない配色・ありえない状況を大胆に組み合わせ、
それを成立させてしまうのです。
現実の世界でありえない表現が成立するゆえ、どこかリアリティーもあり、
一度でいいから訪れてみたい国、うっかり足を踏み入れたくなる世界のようで、
「写真を見ている」 と言うよりも「不思議な絵本を見ている」ような気分にさせてくれます。


2000年代はレタッチや合成を前提にデジタル写真が勢いを見せ、ファンタジーの追求に拍車がかかり、
ポストプロダクションもより工芸的に進化したそう。

ファンタジー全盛期の映画で代表的なものといえば、
チャーリーとチョコレート工場(2005年)・嫌われ松子の一生(2006)
・パコと魔法の絵本(2008)・アリス イン ワンダーランド(2010年)など、
多彩な色彩と大げさなセットでファンタジーを追求しています。
「嫌われ松子の一生」で、主人公・松子が最後中学生に殴られて死んでしまうシーンはとても幻想的で、
ホームレスのボロボロの衣装をまとった松子と、夢のような星空と蛍光色の原っぱのコントラストがドラマチック!
死ぬ前はこんな風に世界が映ったらいいな、と思えるほどの美しさです。

ファンタジーの世界観に強烈に憧れた私は、嘘のような世界を表現することに没頭しました。
桃源郷のような、ユートピアのような世界を表現したいと思い、
物語を考えるみたいにビジュアルを考えるようになりました。

今思えば、Photoshopの技術力はファンタジーを表現したくて身についたのですね。


2010年代半ば以降、ファッション広告の流れはファンタジーが振り切れ、リアリティへの回帰、
近年ではSNS台頭による広告メディアが拡張されています。

リアリティへの回帰=ファンタジーレスではありません。
冒頭にも申し上げましたが、ファッションフォトは「フィクション」であり「ファンタジー」。

リアリティの中にもその2大要素は含まれ、只々表現方法が変化しているのです。

振り子のように揺れ動き、新しい手法と技術が常に開拓されていくのはファッション広告だけではなくデザインも同じ。

留まることない生き物のようなものを相手に日々奮闘ですが、
得意とする世界観や手法を用いて、その時代に合った見せ方が出来るよう、感性を磨き日々精進!と思っております。

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Tim Walker Official Site

https://www.timwalkerphotography.com/
author: Tamura
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